通信やCATV、放送のネットワークが広帯域化しデジタル化して映像伝送サービスを行うようになれば、事実上サービスの境界はなくなりいずれは競合するようになる。
CATV会社は家庭との間に広帯域の同軸ケーブルを引いているのが強みであるが、ネットワークに双方向機能がなく、資金的にも通信事業者ほどの規模はない。そこで、同軸ケーブルの光化や双方向サービス等の通信実験を行うと同時に、大手のCATV会社は下位のCATV会社の買収を進め、1995年にはCATV上位4社の市場占有率が60%を超えた。
通信事業者も遠隔学習や遠隔医療など電話網での映像伝送実験を開始した。しかし、実験用機器の開発に莫大な投資を伴うことや、加入者線の光化には相当な時間が必要という問題もあり、映像サービスはトーンダウンし始めている。また、96年の通信法改正は市内交換市場と長距離通信事業の垣根を取り払うものであるため、やがて長距離と地域の区別がなくなり、全米を対象に全社が一線に並んでサービスを競うことになる。このため、通信法の改正から時を置かずに地域通信事業者同士の合併が始まった。
こうしたことから、ひところの通信事業者とCATV事業者によるサービス競争は、現在、多チャンネル放送をめぐるデジタル衛星放送とCATVとの競争、通信事業をめぐる地域通信事業者と長距離通信事業者の競争へと移行している。
一方、地上波放送も動きが急である。米国にはABC、CBS、NBCの3大ネットワークがあるが、近年ニューズコーポレーションのFOXテレビが第4ネットワークに名乗りを上げた。また、95年にはディズニーによるABCの買収発表があり、翌日にはウェスティングハウス・エレクトリックがCBSの買収を発表した。さらに地上波放送はコンピュータサービス会社とそれぞれ提携し、NBCはネットスケープ社とマイクロソフト社、CBSはコンピュサーブ社、ABCはアメリカオンライン社とそれぞれ提携している。
こうしたメガメディア化の動きは、通信と放送とコンピュータの世界が融合し、メディアの要素がインフラ(ネットワーク)と情報(コンテンツ)とに2分されることを予測し、先取りしたものである。ネットワークはコンテンツによって存在意義が問われ、優れた情報を発信しうるネットワークこそが次世代に生き残れる。こうした論理に従って、米国の伝送メディアはより優れたコンテンツ所有者(制作者)を取り込みながら強大化を目指し、魅力あるネットワークやコンテンツに向かって資本が集中する状況が展開されている。
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